2007年10月24日
アントニオ・タブッキ
こんばんは。今日も東京はいい天気になりましたねー。
風もなくて、つい公園のベンチで日向ぼっこを楽しんで
しまいました。
夕方は自由が丘にある歯医者さんへ・・。実はかなり苦手です、
音も匂いも・・。そしてずいぶん久しぶりだったので
(1年ぶりか)どのくらい口を開けてよいのかわからず、
アゴが痛いです。10年位前から通っていますが、
サッカーのカズ選手も来ているらしい上手な先生でして、
とても信頼しています。助手の方に毎回ブラッシングを
教えて貰うんですが、なかなか覚えられませんねー。
さて今日読んだ本はイタリア文学者で作家の須賀敦子さんが訳した
アントニオ・タブッキ著「インド夜想曲」です。ずいぶん前に
映画を観たことはあるのですが、内容も忘れてしまったし
タブッキという作家の本を読んだことがなかったので。。
今回初めて読んでみたら、面白い~!あっという間に気に
入ってしまいました。
あらすじは、イタリア人の主人公が、行方不明の友人を
探して、ボンベイ、マドラス、ゴアといったインドの主要都市を
訪ねて巡る旅の物語。インドの夜の、じっとりと濃い空気感が
行間からよく伝わってきます。
何でも昔から「インドは失踪するためにある」というそうで、
怖いですね~。そういえば国際空港の出発ロビーの掲示パネルに、
DELHIやBANGALOREという行き先を見ると、なぜか心惹かれて、
ふらふらと旅してみたいなーと思うのは私だけでしょうか。
作中、著者の想いが最もよく汲み取れると思った箇所はこちら。
真夜中、ボンベイの駅の待合室で偶然知り合った男と交わす会話です。
「この肉体の中で、われわれはいったいなにをしているのですか」
僕のそばのベッドで横になる支度をしていた紳士が言った。
その声はこちらの意見をたずねるというふうではなく、質問と
いうよりはただ確認を求めるような調子だった。たとえ質問だった
としても、僕はこたえられなかっただろう。軽々と、そして、
インド人特有の慎重さと控え目な身のこなしで部屋のなかを
あちこち動く彼の痩せた影を、駅のプラットフォームの電灯の
黄色い明りがペンキのはげた壁に映し出していた。
遠くから、ゆっくりと単調な声が聞こえていた。たぶん祈りの声
だろう。あるいは、ただ嘆きを表現するだけで、なにも願わない、
孤独で希望のない嘆きだったかも知れない。なにを言っているのか、
意味を理解するのは、僕には不可能だった。これもまた、インドなのだ。
平板な、明確な区別のない、朦朧とした音の世界。
「これに入って、旅をしているのではないでしょうか」と僕は言った。
質問されてから、かなり時間がたっていたかも知れない。僕は、
遠いことを考えてぼんやりしていた。しばらく、うとうとしたのかも
知れない。僕はひどく疲れていた。
彼が言った。「なんて言われました?」
「肉体のことです」僕がこたえた。「鞄みたいなものではないでしょうか。
われわれは、自分で自分を運んでいるといった」
『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ(白水社)
本を読むこともまた、旅をすることなのかもしれない。
答えのない旅。自分という鞄を抱えて。
この週末は武道館でボニー・ピンクのライブに行く予定です。
久しぶりなので、すごく楽しみ~!
ではまた、おやすみなさいzz...
風もなくて、つい公園のベンチで日向ぼっこを楽しんで
しまいました。
夕方は自由が丘にある歯医者さんへ・・。実はかなり苦手です、
音も匂いも・・。そしてずいぶん久しぶりだったので
(1年ぶりか)どのくらい口を開けてよいのかわからず、
アゴが痛いです。10年位前から通っていますが、
サッカーのカズ選手も来ているらしい上手な先生でして、
とても信頼しています。助手の方に毎回ブラッシングを
教えて貰うんですが、なかなか覚えられませんねー。
さて今日読んだ本はイタリア文学者で作家の須賀敦子さんが訳した
アントニオ・タブッキ著「インド夜想曲」です。ずいぶん前に
映画を観たことはあるのですが、内容も忘れてしまったし
タブッキという作家の本を読んだことがなかったので。。
今回初めて読んでみたら、面白い~!あっという間に気に
入ってしまいました。
あらすじは、イタリア人の主人公が、行方不明の友人を
探して、ボンベイ、マドラス、ゴアといったインドの主要都市を
訪ねて巡る旅の物語。インドの夜の、じっとりと濃い空気感が
行間からよく伝わってきます。
何でも昔から「インドは失踪するためにある」というそうで、
怖いですね~。そういえば国際空港の出発ロビーの掲示パネルに、
DELHIやBANGALOREという行き先を見ると、なぜか心惹かれて、
ふらふらと旅してみたいなーと思うのは私だけでしょうか。
作中、著者の想いが最もよく汲み取れると思った箇所はこちら。
真夜中、ボンベイの駅の待合室で偶然知り合った男と交わす会話です。
「この肉体の中で、われわれはいったいなにをしているのですか」
僕のそばのベッドで横になる支度をしていた紳士が言った。
その声はこちらの意見をたずねるというふうではなく、質問と
いうよりはただ確認を求めるような調子だった。たとえ質問だった
としても、僕はこたえられなかっただろう。軽々と、そして、
インド人特有の慎重さと控え目な身のこなしで部屋のなかを
あちこち動く彼の痩せた影を、駅のプラットフォームの電灯の
黄色い明りがペンキのはげた壁に映し出していた。
遠くから、ゆっくりと単調な声が聞こえていた。たぶん祈りの声
だろう。あるいは、ただ嘆きを表現するだけで、なにも願わない、
孤独で希望のない嘆きだったかも知れない。なにを言っているのか、
意味を理解するのは、僕には不可能だった。これもまた、インドなのだ。
平板な、明確な区別のない、朦朧とした音の世界。
「これに入って、旅をしているのではないでしょうか」と僕は言った。
質問されてから、かなり時間がたっていたかも知れない。僕は、
遠いことを考えてぼんやりしていた。しばらく、うとうとしたのかも
知れない。僕はひどく疲れていた。
彼が言った。「なんて言われました?」
「肉体のことです」僕がこたえた。「鞄みたいなものではないでしょうか。
われわれは、自分で自分を運んでいるといった」
『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ(白水社)
本を読むこともまた、旅をすることなのかもしれない。
答えのない旅。自分という鞄を抱えて。
この週末は武道館でボニー・ピンクのライブに行く予定です。
久しぶりなので、すごく楽しみ~!
ではまた、おやすみなさいzz...