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ツヨシ、しっかりしなさい!! テニス侍&ジョグ侍ツヨシです!<記録>フル3'38"58('09.04かすみがうら)ハーフ1'35"50('09.04焼津)10k40'48('09.05葛西臨海公園)

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クラレッタ

こんばんは。日曜くらいから体調不良で、今日は家で一日
休んでいました。家の前の診療所に行って、なじみの先生に
診てもらったら去年と同じ胃腸炎とのことで、出してもらった
薬も前と同じです・・。とにかくゆっくりして我慢しつつ、
治るのを待つしかないようです。幸運にも熱はなく、食欲も
あるのでじきに良くなると思っています。

しかし日ごろの行いの結果なのか、処方された『整腸剤
ラックミー顆粒3日分』が、今年の私のクリスマスプレゼントと
なってしまいました。。

さて前回の記事で、女性にとってのバッグへの思い入れに
ついて、積年の謎を晴らしてくれた文章を読んだと書きました。
今日その塩野七生さんのエッセイ文を、かなり長いですが
引用したいと思います。
皆さんも、もしかしたら「ああ、こういうことだったんだー」と
膝を打たれるかも知れません。

「男たちは、女のハンドバッグを、こまごまとした女特有の
品々をもち歩く入れ物にすぎない、と思っているにちがいない。
ところが、これが、完全な誤解なのだ。女にとっての
ハンドバッグは、女の心の、そして肉体の一部なのである。
女のバッグには、たしかにいろいろな実用小物が入っている。
ただ、女の場合、なにが入っているかは問題ではない。
もち歩くという行為自体が、意味をもつのである。

試しに、ハンドバッグをもっていないときの、女を想像してみて
ほしい。なにかが欠けているはずだ。大きなポケットがいくつも
ついている服で、実用小物を入れる場所には不足しなくとも、
女はバッグをもちたがる。なにも手にしていないと、大切なものが
欠けていることを、無意識にもわかっている証拠である。
ハンドバッグという物体が、女にとってどれほど大きな意味をもつかを
示したエピソードを、ひとつご紹介したい。

第二次世界大戦の少し前、ファシズム下のイタリアは、ムッソリーニに
支配されていた。全体主義政権の樹立に成功して、のち二十年間も
イタリアの独裁者でいた男だ。ムッソリーニとヒトラーを同類視したがる
人は今も多いが、私にはこの二人は、相当にちがいがあったと思えて
ならない。まずもって、ムッソリーニは、独裁者は独裁者でも、ユダヤ人を
殺しまくって平然としていた、いや自分は正しい行為をしていると確信さえ
もっていた、ヒトラーの冷酷さはもちあわせていなかった。他者より
自分たちが優れているとした優越心とは、無縁であったからである。
ドイツ人とイタリア人との違いかもしれない。辺境の北の民ドイツ人と、
古代ローマ時代から都会人でありつづけた、南の民イタリア人の
ちがいによるのかもしれない。一言でいえば、ムッソリーニは、良きにつけ
悪しきにつけ、ヒトラーと比べて、段ちがいに人間的であったのである。

このムッソリーニには、愛人が一人いた。名を、クラレッタ・ペタッチという。
美しくて明るくて南国的な、夫が妻として紹介するとき、ごく自然に誇りを
抱くような、春のさわやかな西風が最もふさわしいと思わせる女だった。
それが、夏の激情も、秋の憂愁も、冬の絶望も味わうことになったのは、
ムッソリーニに出会ってしまったからである。

ムッソリーニには、もちろん正夫人がいた。ラケーレという名で、子供も、
五・六人はもうけた仲である。いわゆるソウコウの妻で、精神も身体も
ムッソリーニに似て、たくましい農民タイプの女だった。だからだろうが、
なかなかしっかりした女であったらしい。ムッソリーニは愛人に、妻とは
反対の女を選んだのだろう。だが、妻は妻である。カトリックの国でもあり、
離婚などは問題外だった。

クラレッタの存在は、まもなく、イタリア人の相当な部分の知るところと
なったようである。ムッソリーニが、愛人の存在をひた隠しにする
という型の男でもなかったからだろうが、その国のナンバー・ワンの
愛人となれば、やはり隠しとおすのはむずかしかったからである。
それでいて、イタリア人の多くは、愛人のいるこのリーダーを、それゆえに
非難したりしはしなかった。イタリア人の最大の長所はバランスのとれた
精神の持ち主であるということで、人生を黒か白かにはっきり分けることが
不可能なことを知っているこの種の人々にとって、愛人の存在は、
人間的な証拠とでもうけとられたのであろう。

(中略)
このような状態で幾年かが過ぎた後、イタリアは、ドイツ側について戦争を
はじめる。そして、当初は好調でまもなくドイツ、イタリア、日本側に不利に
変わったのは、第二次世界大戦の戦況の変化だから、ここでは説明する
必要もないだろう。この三国の中で最初に戦線から離脱したのが、
ムッソリーニのイタリアだった。長靴の形をしたイタリアのつまさきから
はじまり、次第に北上した連合軍は、イタリア内のパルチザンの助けも
あって、北イタリアの国境近くまで、ムッソリーニを追いつめる。
ドイツの下士官に化けてスイスに逃亡しようとしたムッソリーニが、
パルチザンに捕われたのは、日本が降伏する一年前であった。ここから、
愛人クラレッタが表舞台に登場してくるのだ。

パルチザンの手におちたということは、死と同じことだった。その
ムッソリーニに、彼女は、あらゆる手をつくして近づこうとする。
一方、正妻のラケーレは、子供たちを連れて、中立国スイスに
逃れることに成功していた。その妻に、ムッソリーニは、子供たちの
ために生きてくれと、実に真情あふれる美しい手紙を送っている。
反対に、子供のない愛人は、男と死をともにすることだけを考えて
いたのである。

クラレッタには、愛する男の許に行き、ともに死ぬことだけが残された。
ようやく男に追いついた彼女は、もう二度と離れない決心であったらしい。
パルチザンたちも、彼女までは殺すつもりはなかったし、とくに
彼らの首領格だった一人の伯爵は、クラレッタだけは助けようと努めた
のだが、彼女の決心はゆるがなかった。死を前に気の落ちこんでいる
ムッソリーニをなぐさめる勇気さえ、彼女にはあったのだから。

最後の一夜を過ごした百姓家を出て行くとき、クラレッタは、それまで
持っていたハンドバッグを、置いたままで出て行く。小路に沿う
一つの家の前の鉄門を背に、独裁者は機関銃の集中砲火を浴びて死んだ。
愛人をかばって、この殺人行為に最後まで抗議をやめなかった
クラレッタも、ともに死んだ。

それまで手放さずにもち歩いていたハンドバッグを、まるで死期を
予測したように、その朝だけはもって出なかったクラレッタを
心にとめていたのが、あの伯爵である。貴族生まれの男だった
からこそ、そのような学校では教えない文化も、肌身で理解していた
のであろう。死を覚悟した女が、世間のすべてを捨てる想いを、
ハンドバッグを置いたままで出て行くことで、無意識にあらわしている。」

塩野七生著『男たちへ』文藝春秋

女性にとっては「バッグを持ちあるくという行為それ自体に意味があり」、
「ないと何かが欠けている」印象を与え、それを置いて行くことは
「世間のすべてを捨てる」ことと同義なのだということですね。私も
これからは、使われないバッグの山を見るたびに「これはもう処分した
方が・・」などと野暮なことは決して言わずに、女の人生における大切な
小道具のひとつとして、温かく見守ることができそうです。。

ではまた、おやすみなさいzz...
日記 | 投稿者 テニス侍 21:23 | コメント(2) | トラックバック(0)
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